学生経営居酒屋「あるばか」ってどんなとこ?

新橋から徒歩3分、数多くの飲み屋が立ち並ぶなかにある「学生経営居酒屋 あるばか」。その名のとおり、経営しているのは現役大学生。2010年にオープンして以来、1年ごとに代表者を交替しながら7年続いている。企業が資本を提供し運営する学生居酒屋とは異なり、運営のすべてが学生によって行われている点が特徴だ。果たして学生経営居酒屋の実態とは?6~8代と3年間にわたり代表をつとめた根来みのりさんに話を聞くため、エフラボ編集者が店の暖簾をくぐった。

「あるばか」8代目代表 根来 みのり

2019年卒業予定の大学3年生。埼玉県出身。大学進学時に上京し、2年時より「学生居酒屋 あるばか」に参加。そのかたわら、学生向けの就職支援活動にも従事。その活動実績が認められ、最近では大学や企業から講演に呼ばれるなど幅広く活躍。卒業後は飲食業界への就職が決まっている。将来の夢は飲食業界を明るくすること。そんな彼女にとってあるばかは夢を叶える為のエネルギーチャージの場所。夢が叶ったお客さんが再来することが一番の喜びだという。

■コンセプトは、「夢をかなえる居酒屋」

――「学生居酒屋 あるばか」が始まったいきさつを教えてください。

 「あるばか」初代代表の石塚さんは、学生時代からいろいろな業界の社会人と交流があったのですが、あるときその一人から「資金を出すから、店をやってみない?」と持ちかけられました。面白そうだと思ったので、石塚さんは一緒に運営する学生を集めたり、場所を決めたりと準備を進めました。ところがいざオープンする2ヶ月前になって、その社会人がいなくなってしまったんです。

 だけど石塚さんはあきらめず、当時集まっていた学生でお金を出し合い、「あるばか」をスタートさせました。石塚さんは卒業と同時に店を閉めるつもりだったのですが、店をやりたいという学生があらわれたので、その方に任せることにしたそうです。以来、1年ごとに代表を交替しながら続いています。


――根来さんは6~8代と代表をつとめましたが、どのようなきっかけで始めたのですか? 

 私、大学1年までは何もしてなかったんです。サークルにも入らず、家と学校、バイト先を行き来する毎日で、たまに学内で飲み会をするくらい。学生生活にちょっと物足りなさを感じ、「何かやってみたいな」と思いながら学生団体やボランティアの情報をネットで探していたところ、「あるばか」の5代目代表が6代目のメンバーを募集していることを知ったんです。「面白そうだな、やってみようかな」と軽い気持ちで参加したんですが、ハマってしまって、3代続けて代表をつとめるまでになりました(笑)。


――ほかの方はどのような経緯で参加しているのですか?

 「あるばか」には、早稲田、帝京平成、千葉大、東洋大学、理科大学などいろいろな学校から学生が集まっていますし、学年も1年生から4年生までいます。そのほとんどが、先輩から誘われたり、人づてに紹介されたりして参加していますね。私のように自分で見つけて飛び込むというのは少数派です

↑ 2016年、株式会社賢者屋が主催する学生団体総選挙にて部門グランプリを受賞!

 学生経営という活動発表が企業から高く評価された。


――「あるばか」は、どのような居酒屋ですか?

「あるばか」のコンセプトは、「夢、志をかなえる居酒屋」です。学生でも社会人でも、夢を持って生きている人ってたくさんいますよね。夢について、お酒を飲みながら話をしたり、意見を交換するうちに、新しいアイデアや刺激、縁などが生まれます。それをさらなる活力としてそれぞれが夢をかなえていく、そんな場所になれたらいいなと思っているんです。今はとくに夢ややりたいことがない人も、自分のやりたいことを見つけるきっかけの場にしてもらえたら嬉しいですし、そんなお店をめざしています。

↑常連さんたち。「いつも自分と同世代の人と飲むことが多いけど、ここにくれば若い世代と飲めるし、どんなことを今の若者は考えているのか知れる。若いエネルギーのおかげでついつい飲んじゃう(笑)あと、自分の大学時代を思い出して思い出に浸っちゃうこともあるな~。」



■飲食業で自分自身を成長させたい

――学生生活と「あるばか」の運営を両立するのは、大変ではありませんか?

 そう大変でもありません。今は4年生が多く授業も少ないので、ゆとりをもって参加している人が多いですね。たとえば私の場合、午前中にアルバイトをしてから授業に出て、そのあと「あるばか」で仕事をして、終わったらレポートを書く、といった感じです。

 今、従業員は10人で、シフトを組んで毎日3人くらいで運営しています。それで無理なくまわっていますし、ほとんどの人が、ほかにサークル活動もしています。


――飲食店の経営には難しさもあると思いますが、どんなところが難しいと感じますか?

 そうですね…いろんな難しさはありますが、「自分たちがやりたいこと」と、「お客様が求めていること」を両立させるのが特に難しいな、と思います。「楽しくやるのが一番」という基本姿勢はありますが、当然、自分たちが楽しんでばかりいてもお客様は来てくれません。

 たとえばメニュー作り。アイデアの段階では盛り上がったけど、実際に作ってみるとあんまりお客様にはウケないということもあります。そんなとき、どこまで自分たちのやりたいことを進めるか、それともやめるのか…その判断のタイミングは、難しいなと思います。

 ただ、「楽しむこと」と「お客様の満足」の両立という難しさは、社会で仕事をしていくうえでも続いていくものですよね。その部分を学生のうちから意識して成長させられるのは、「あるばか」のよさのひとつだと思います。

――ほかの方は、どのような理由で「あるばか」に参加するのでしょうか?

 「あるばか」に来る理由はさまざまですし、けっこう人によって温度差はあります。私のように「面白そうだから来ました」と軽い気持ちで参加する人もいれば(笑)、「経営を学んで、将来につなげたい」という人もいます。

 ただ「夢をかなえる居酒屋」というゴールは同じなので、そこに向かって努力していくなかで、それぞれが成長できる環境にあると思います。皆、この先に別の人生のステージがあるので、いかに楽しく成長につながることをやっていけるかが大切だと思っています。

↑あるばか初代スタッフの出版本。彼は大学時代に「店を出すこと」と「本を出版すること」の夢をかなえた強者。みんなが尊敬するOB。


――全員が、飲食の世界で就職することを希望しているわけではないのですか?

 もちろん飲食業界を目指す人もいますが、パイロットになりたい人、女性向けフィットネスジムの会社に就職が決まっている人…本当にさまざまです。

 ただ共通しているのは、「飲食の仕事を通して成長したい、スキルを身につけたい」という気持ちです。

 パイロットを目指している人は、航空業界で働くうえで大切なのは、目上のパイロットと話すトーク力だと考えました。「あるばか」で働き、企業に勤める年上のサラリーマンを相手に接客することで、そのトーク力を磨きたかったそうです。

 女性向けのフィットネスジムで働く予定の人は、真の意味で女性の役に立つことを目標としています。痩せたい、健康になりたいという表面的な目標ではなく、本当にその人がなりたいもの…結婚したいとか、長生きして孫の顔をみたいとか、そういった深い願望をかなえるためのお手伝いをしたい。だからこそ飲食の仕事をして、お客様の願望を引き出してかなえるスキルを身につけたいそうです。

↑ボブさん■2018年卒業予定の大学4年生。あるばか歴は半年。あるばかで経営や接客を学び、あるばかとの出会いは人生のターニングポイントだったとも話す。将来の夢は医療系の経営コンサルタント。あるばかは「自分の夢に近づけられる場所」と語り、その夢を叶えるにはここで何を学べるかと日々試行錯誤しながら働いている。



■飲食業で得た最大の成果は「自信」

――飲食業での仕事を通して、根来さんご自身に変化はありましたか?

 お客様の多くは近隣の企業に勤める、スーツを着た会社員の方です。会社員と一口にいっても老若男女さまざまですし、お仕事も違います。はじめのうちは、そういった社会人の方々と何を話せばいいかわからなかったし、話についていくこともできませんでした。

 ただ接客を続けるうちに、お客様の言葉のうしろ側にあるものを考える癖がつきました。そしてそこから、お客様の求めていることに応える力も身についてきたと思います。


――さまざまな企業の実態や、内情などについても知ることができそうですね。

 そうですね、いろんなお話を聞くことができたり、ご縁ができたりするのも接客業の面白さだと思います。人事の方もたくさんいらっしゃいますし、実際に「あるばか」での出会いがきっかけで就職が決まった学生もいます。

 私が常々感じるのは、どの業界であっても、楽しんで仕事をしている人と、そうじゃない人がいるということです。「この業界に就職すれば必ず幸せになれる」というのは幻想で、結局は、自分しだいで人生は変わるんだと思うようになりました。

↑シンソンさん■2017年入学の大学1年生。ボブさんの紹介であるばかで勤務を始める。あるばかの魅力は学生だけで一からお店作りができることだそう。取材時は勤務してまだ1ヶ月だったが、最近は慣れてきて、タイミングを見てお客さんに話しかけたり提供したりする余裕が出てきたと話す。進級しても続けるそうなので戦力になることを期待!


――接客をするうえで、ときに嫌な思いをすることもあるのでは?

お客様からの反応はさまざまです。ありがたいことを言ってくださる方も多く、「期待してるよ、がんばって」「若者にはこういったパワーを求めているよ」と言われると、素直に「嬉しいな、がんばろう」と思います。

 反対に、嫌なことというか…悲しくなるようなことを言われたこともあります。「夢をかなえる居酒屋」というと、「若いね~、大人になったらそんなこと言ってられないよ」とか、「社会の厳しさを知ればわかるよ」とか。

 でも今は、あまり気にならなくなりました。接客を続けるうちに、「すべての発言には理由があるんだ」とわかってきたからです。

 実際、よくお話を聞いていくと、そのお客様自身に夢を諦めた経験があったり、現時点で心が傷ついていたりすることが多々ありました。

 また、そんなとき、少しでもお客様が元気になれるような対応をしたいなと考えられるようにもなりました。「どうすれば、このお客様の心を満たすことができるだろう」、「私ができることは何だろう」。そんなふうに考えながら接すると、その気持ちはお客様に伝わります。しだいにお客様の気持ちが変化して元気になってくださったり、最終的に常連になってくださることもありました。

 きっと、長い人生では若い頃にもっていた夢がなくなってしまったり、心が折れてしまうタイミングってあるんだと思います。「あるばか」がその夢を思い出す、あるいは違う夢を見つける場になれたら嬉しいなって思います。

――理想のお店を、着実につくりあげてきたのですね。経営的な成果はいかがですか? 

 最初のころは、利益を開業資金の回収にあてていたそうです。数代前からは交通費込みのアルバイト代を従業員に出せるようになりましたが、まだみんなのがんばりの量には見合っていませんでした。でも今年になってやっと、ある程度の金額を出せるようになったんです。まだ目標額を目指している途中ではありますが、少しずつ成長しています。


――「あるばか」で人間的に成長し、さまざまなスキルを身につけた根来さんですが、ご自身にとって最大の成果とは何でしょうか?

 「自信」ですね。自分の考えたことが売上の数字に直結したり、仲間と話し合うなかで意見をまとめることができたり、お客様のご要望に応えて喜んでいただけたり…そういった経験の積み重ねから得られたのは、この先どんなことがあってもやっていける、自分なら何でもできるという「自信」だと思います。コミュニケーションスキルとか経営ノウハウは、やっているうちに自然と身についていきます。


――最後に、今後就職する上での意気込みを語ってください!

 何事も諦めたくないと思います!

 私はもともと自分に自信がなく、人の目を見て話すこともできませんでした。そんな私が「あるばか」を通じて自信を身につけ、今では学生の就職支援団体でカウンセリングをしたり、企業のトークイベントに呼ばれるようになるまでに成長しました。その変わりように、久しぶりに会う人はみんな驚くほどです。

 自分のことが嫌いだったけど、ずっとこのままでいたくなかったからいろんなことにチャレンジしました。その結果、自分のことをすごく好きになれたし、何でもできるって思えるようになりました。だから社会に出ても、少しでも自分に可能性を感じているなら、諦めないで色んなことに挑戦していきたいと思います。


↑カウンターにおいてある「夢ノート」は初代からずっと続けており、取材時で32冊目。お客さん一人ひとりの夢はもちろん、あるばかへの感謝のメッセージなども書かれている。あるばかのコンセプトでもある「夢」を形にしているこのノート、来店の際は一言爪あとを残していきたいものだ。


■あるばか 

東京都港区新橋4-15-8 B1F

JR新橋駅烏森口より徒歩約3分

080-5867-6722

18:00~23:00(L.O. Food 22:20/Drink 22:40)

※曜日・状況によってはスタンディングとなります。

日曜定休日

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