亜細亜大学 茂木教授に聞く飲食業界7のこと。<前編>

普段はお客さんとして飲食店を利用するけど、飲食業界のことは全然知らない!

業界に対してのギモンを亜細亜大学の茂木教授に答えてもらいました!

茂木信太郎

亜細亜大学

経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科

教授、博士(観光学)

食品需給研究センター、外食産業総合調査研究センター(外食総研)、フードシステム総合研究所を経て信州大学経済学部、信州大学経営大学院にて、「経営学」「マーケティング」「地域マネジメント論」などを講義。文部科学省海外研究員としてアメリカ・イタリアで研究。立教大学、女子栄養大学、松本大学、にて非常勤講師、2009年より現職、「フードサービスマネジメント論」「ホスピタリティ・マネジメント特別講義」など担当。なら食と農魅力創造国際大学校、法政大学大学院、川村女子学園大学目白観光文化研究所研究主幹兼務。著書『フードサービスの教科書』(2017年、創成社)など多数。


①飲食業界で働く魅力を教えてください!

   一言で、“奥が深い!”、“可能性が大きい!”

 学生の皆さんは多くの方が飲食業界でアルバイト経験があるために、そこで体験したことがすべてだと誤解してしまっています。飲食業界の奥深さや可能性の広がりを感知しないままなので、大変残念に思っています。

 飲食業界を別の言葉で言い換えると、料理(食)とお客様(人間)をお引き合わせする仕事です。「生ものと生ものを演出する仕事」だとも言えます。例えば、料理には、盛り付けの妙や匂いという五感に訴えるアートや民芸のような世界観があります。食材には生産地の風土や料理に辿り着くまでの歴史が埋め込まれています。お客様も、料理と出会うまでの偶然や必然を装っています。お客様は、お料理を前にしばし人生の途中下車をされておられます。ですから、これらを結びつける仕事は、例えていうと映画監督のようだとは思いませんか。同じシナリオでも作家が違えば作品が違いますね。同じように料理もお客様の体験もそれを引き合わせた人によってまるで違うものになっているのです。

 人間には、動物や植物など他の生命体にはない人間にだけに存在する3つの特徴があります。

 一つ目は“料理”。ほかの生き物は料理など作りません。料理をイメージする脳の機能がないからです。人間は料理のイメージに基づいて食材を集めたり、料理に合う道具を選んだり、操作をしたりします。美味しいもの、美味しく見えるもののイメージと追求欲求が、食材を料理に変えていきます。

 二つ目は、提供、サービス。動物も親が餌を調達して子供に運び食べさせることがありますが、見知らぬ第三者に料理を提供するのは人間だけです。

 最後、三つ目はストーリー。人間だけがストーリーをつくり、そのなかで生きていこうとします。動物は餌場を求めて体験を学習することはありますが、ストーリーをつくることはありません。よく、お袋の味という言い方をしますね。それは自分がこれまで生きてきた人生というストーリーを凝縮した言葉です。ですから、レストランで食事をするという行為は、その人なりのストーリーを紡いでいる行為であるので、あとから思い出となって語られます。お店は舞台。いいお店はそのように語られていきます。他の動物では人生の思い出やストーリーを物語ることはいたしません。

 まとめますと、料理と提供(サービス)とストーリー、これらは人間だけの固有の営みで、そのことを具体化することが飲食業界なのです。そこに携わる人一人ひとりの表現法やプレゼンテーションが飲食の世界をさらに広げていくことになります。

 飲食業界はただ単に人々の腹満たしの場ではないということです。このことに気づいて日々研究を続けていけば、次々に奥深い世界が広がっていきますね。飲食業界で働くことは魅力的で楽しいことだと思いませんか。


②飲食店に関心を持ち、研究対象とした理由を教えてください!

 偶然といえば偶然。僕の最初の就職先は食品需給研究センターという研究機関でした。需要と供給、読んで字のごとく、食品の生産、流通、消費とすべての領域を調査したり研究したりする仕事だったのです。就職時は1970年代末。日本で外食産業が急成長している真っただ中でした。外食産業はいまでいうベンチャーですね。そのころは業界のデータも整っておらず、研究する人もおりません。ですから、新人の僕に、新しい産業の研究という課題が回されてきたのですね。

 そこで調べ始めると、これがめっぽう面白い。なにしろ、それまでの日本の産業界にはなかったイノベーション(革新的な経営手法や技術)が次々と繰り出されており、マスコミや社会でも大注目されていましたから、今で言うと“AI”(人工知能)や“VR”(ヴァーチャルリアリティ)のような状況だと言えば分かり易いでしょうか。

また同時並行で、私たちの生活がどんどんと目に見えて変わっていった時代です。家庭での食生活一辺倒だった時代から、外食を普通にする生活へと世の中が変わりました。これを牽引したのはチェーンレストランです。他方で、外食産業の成長は、新しい食材の発掘、品種改良、産地契約など農業や水産業の変化も誘導していきます。いってみれば外食産業の成長そのものが、社会全体、世の中の変化、イノベーションを巻き起こしていく源となっていたのです。

飲食業界にはこうした社会の変化の先取りがいつもあります。いまも、これからも目を離せない存在ですね。


③どんな人が飲食業に向いていると思いますか?

 ずばり、「好奇心のある人」!なぜなら飲食業界の奥の深さに分け入って、自分のものとしていこういという気持ちが大切だからだと思います。

これから10年後を考えると、ロボットとAIが、人間の世界に介入してきます。多くの仕事がロボットとAIに置き換わっていくと思われます。ではロボットとAIが苦手とする仕事は何でしょうか。こう問いかけると人間の好奇心がヒントになります。AIは、情報のインプットと論理的な解析は見事に成し遂げても、好奇心を自ら示すことはできません(人間の好奇心を類推することはしますが)。

飲食業界は、いやがおうでも好奇心を持たざるを得ない世界ですね。料理も人も生き物だと先述した通り、食材のコンディションは日々変わりますので料理の調理法も毎日微妙に違いますし、顧客も日々入れ替われば同じ顧客でも日々コンディションが異なります。ですから、これらの繋ぎ役であるスタッフも日々刺激を受けて日々好奇心を掻き立てられます。好奇心も日々進化するのです。

 あと、よく言われていますが、「人に興味のある人」!これも大事だと思います。調理や接客といった技術的なものはあとから学ぶことができますので、最初から必須ではありません。技術的なことはそもそも社内教育で育てていくべきものですから。もちろん、学ぶことに関しての姿勢は大切です。

 結論としては、好奇心のある人と、人に関心のある人。このふたつがあると良いと思います。その人の見かけ上や表面上で向いているとか向いていないとか決めつけなくてよいと思います。よく自己分析と聞きますが、企業は特定の傾向のある人だけを求めることはありません。多数の人たちで成り立つ企業は、そのなかに多様な人材を擁して、その人たちの総合的な力でより高いパフォーマンスを求めているからです。学校の成績は“既知の習得”が成績の基本ですが、社会では“未知への適応力”が業績の基本となるのですから。


<後半へ続く>

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