20代の時なにしてた?―あの人の個々ルーツ―⑤

27歳で居酒屋へ!最初は米の炊き方も知らなった。3日で主婦の一生分の皿洗いを経験をしたことも。でも、下積みは一切ない。すべてが上積みだった。

お金がたくさんあるとか肩書きがどうとか興味はないけど、自分の仕事と人生を楽しんでいる人ってかっこいい。でも、待てよ。社会人デビューの頃はどうだったのかな。飲食の仕事に携わる素敵な5人の「20代」。何者かになるための大切で愛おしいそれぞれの助走期間を赤裸々に語ってもらいました。

第5回は、27才で飲食業界に転身し、未経験だったにもかかわらず今や5業態9店舗を経営する株式会社 ベイシックス 代表取締役の岩澤 博さんが登場です。

岩澤 博
株式会社 ベイシックス 代表取締役

1961年生まれ、東京都葛飾区出身。高校卒業後、いくつかの職業を経たのち、27歳で飲食業界へ転身、32歳で独立1号店となる「てやん亭゛」をオープン。現在は、「ジョウモン」、「ミートマン」、「ビストロ バードマン7-5-7」、「ごりょうさん」など5業態9店舗(内1店舗は社内独立店舗)を展開。2018年はシドニーでの出店も決定。


きっかけは安易だけれど飲食の世界に自ら、進む

 遊びで行ったハワイから昨日帰ってきたばかり。しかも、足の指の骨折というおみやげつきで……。居酒屋業界で働く人間なら誰もが知っている、とりわけ若者からは絶大な支持を受けて慕われている岩澤氏、通称ガンさん。人に囲まれ、人に愛される……そんな自分について彼自身はどう思っているのか。

「自分の師匠だった宇野さん(「くいものや楽」の社長)がそういう人でしたね。八ヶ岳やカナダに住んで、誰もが憧れるような生き方をしていた。でも社長たるもの、そういう憧れられる存在じゃなかったら従業員も嫌じゃない? 自分たちもいつか独立してお店を流行らせればこういうふうになれるんだ、という見本であるべき。でも、従業員との距離感は大切にしているつもりです。従業員の前でめちゃくちゃに酔っ払って、ときにはすっぽんぽんになるときもあるけど、こんな人でもお店できるんだーと思ってもらえればそれでいい(笑)」


現在は月商1000万円を超える大繁盛店を次々と創り出し、他の飲食経営者からも常に注目を集める岩澤氏だが、もともとは飲食業界を志していたわけではなかった。高校卒業後、ミシンのセールス、喫茶店のウェイター、ビルの掃除、自動車の工場など、様々な職を転々とする。20歳を過ぎて、アパレルの会社に就職。そして勤務地が表参道になったことが、飲食業界に進むきっかけとなる。

「表参道で働き出してから人生観が変わりましたね。おしゃれな人にかっこいいお店、これはちょっとすげぇな……と。当時カフェバーブームで、よく遊びに行ってたんだけど、それが飲食業を知る第一歩でしたね」


そして偶然の出会いが岩澤氏を飲食の世界へと導く。それは取引先のブティックを経堂で経営していた、とある夫婦であった。

「そのご夫婦が、夜になるとブティックの2階で飲食店をやっているので遊びに行ったら、なんか居心地もよくて、ご飯もおいしくて、安易に飲食店っていいなぁと思っちゃったんだよね(笑)。そしたら、『岩澤くん、それなら〝くいものや楽〟っていういいお店があるから、そこで修業するといいよ』って言われて、アパレルを速攻で辞めて、修業しに行ったというわけです(笑)」


もともとアパレルで独立するのは難しいと感じていた岩澤氏。飲食店での勤務経験はもちろん「0」。だが、気持ちの切り替えは早かった。これが27歳のときの話。


密度の濃い5年間を終えて独立、そして規模がアップ

「『くいものや楽』は、25坪くらいの小さな店なのに、1日70万円以上は売り上げる人気店で、とにかく忙しかった。まだ食器洗浄器なんてない時代だから、俺は3日で普通の主婦が一生かかって洗うぐらいの皿を洗ったよ(笑)。本当は3年で辞めて独立するつもりだったけど、独立資金のためにも5年間働いて、自分の貯金と合わせて1000万円を貯めたね」

 

いわゆる下積み時代、辛くはなかったのかと質問してみると。

「まったく下積みは無かったよ(笑)全部が上積み。お米の炊き方も知らなかった自分に全部一から教えてくれて、お金ももらえる。すべてがありがたい経験。だから上積みなんだよね(笑)」


そしていざ、物件探しを始めた岩澤氏が見つけたのは、西荻窪の裏通りにあるビルの地下1階。そこに『てやん亭』の1号店をオープンする。

「場所にこだわりはなくて、とにかく安いところが良かった。もちろん、スタッフを雇う余裕がないから全部ひとり。大変だったけど、自分のお店が持てて本当に充実してたね。その後、一緒に働きたいって言ってくれた二人を雇い、更にがんばらなくちゃという気持ちになったし、口コミも広がって、最高で月430万円を売り上げる店になった」

↑32才で西荻窪にオープンした1号店。当初ひとりでお店をはじめた時、手伝ってくれたお母さんと一緒の貴重な写真。


 店の運営が順調にまわり始めた時だったが、その矢先に彼はバイクで大事故を起こしてしまう……。

「タクシーと正面衝突して、1ヶ月入院したの。でもヘルメットをかぶってたから頭は無事で……。ちなみにこのヘルメットは、そのときの従業員からもらった誕生日プレゼントだった。俺の命が助かったのは、そいつらのおかげだよね」

 1ヶ月も店に立てないことを不安に思っていた岩澤氏だったが、退院して店に戻ると売り上げは更に上がっていた。この経験が、現在の〝店のすべてを任せる〟岩澤氏のスタンスにつながっている。そして〝2店舗目をだそう〟と決意する。

「どうせだすならあこがれの地、表参道でって思って、だいぶ無理した出店だったけど、ものすごく流行ってさ。生活もガラッと変わったよね。それまでは50㏄のバイクで移動してて、信号待ちの時とか、となりにポルシェが止まるわけ。いつか自分もって思ってたけど、表参道の『てやん亭゛』がヒットしてから、早速ベンツ買っちゃったもん(笑)。今思えば、あの頃は店をだせば売れる時代だったね。その一方で、最初は調子が良い店でも、潰れてダメになる人たちをたくさん見たな。その差は、いろんなところにアンテナをはっているかいないかの違いだと、俺は思いますね」


そしてある時、岩澤氏は旅行先の博多で、博多串焼きと出会い衝撃を受ける。

「当時付き合ってた彼女に振られて傷心旅行したんだよね、博多に(笑)。そこで知り合いに連れて行ってもらったのが、博多串焼きの店。こんなの東京にはないと思って表参道の『てやん亭゛』が入ってるビルの3階がちょうど空いたから、そこでやってみたらこれが大繁盛! じゃあこの業態を1階でも表現したいと思って出店したのが、ここ六本木の『ジョウモン』なんです」

↑難しい話は一切なしで、一緒に酒を飲み盛り上げるガンさん流のスタッフ育成。


従業員が育ち、店が波に乗ったら、次の店を出す……こうして気がつけば、今の店舗数になっていた。では、岩澤氏の店づくりのこだわりとは?

「こだわりはあまりなくて、スタッフがイキイキと働ける空間をつくるだけ。看板がないのも、必要ないと思っているから。もともと立地の悪いところでお店をだしてるから、看板をだしても意味がないし、来る人は最初から目的を持ってきてくれる。まぁ、そのおかげで穴場と呼ばれるのかも知れないけどね」



今の若者たちに思うことそして、助言できること

では、岩澤氏にとっての20代とは? そして今の若い人に伝えたいことはあるのかと問うと、こんな答えが返ってきた。

「最近、サーフィンはじめたんだけど、これって人生と似てるなぁと思って。共通するのは助走が大切ってこと。サーフィンって波に乗る前のパドリングが重要でさ。この助走を一生懸命がむしゃらにすればするほど結果がついてくる。つまりさ、20代は助走の時期なんだよね。俺の場合は32歳まで助走期間だったけど(笑)。それまで経験したこと全てが積み重なって、その後の人生をつくり上げるから、目標に向かってどれだけ必死に助走するかで30代、40代の人生が変わると思う。それとひとつアドバイスとして言えるのは、心の底から信用できる上司と、それとは逆で反面教師となる人を見つけること。信用できる上司にはいろんな話を聞いて教わる、そして反面教師の人とは逃げずにとことんぶつかる。すると人を見る目が養えるし、自分がどういうタイプの人間か知ることができる」


サーフィンから学ぶことがあるように、岩澤氏は今でも、いろいろなことを体験し、吸収している。そして彼にはずっと変わらないことがある。

「お客さんが喜ぶためだったらなんでもやるというスタンスや、自由に自分らしく生きるという考えはずっと変わってない。まわりから見たら、ただのバカかもしれないけど、それを見守ってくれている仲間には感謝の気持ちしかないし、自分はまわりに大切にされている幸せものだといつも思っていますね」


最後に、岩澤氏の今後の夢とは……。

「夢という言葉はあまり好きじゃないんだけど、飲食で幸せになるには自分でお店をだすのがいちばんいい。だから、独立してそこそこお店が繁盛して、家族と幸せに暮らしていける人を一人でも多く増やしたいね。それが夢。ただ、うちのお店でちゃんと働いたら、繁盛店をつくるノウハウを教えてあげられる自信は、はっきり言ってありますよ(笑)」

↑六本木の高架下で、撮影をお願いしたところ「キメ」ポーズで快く応対!いつでもサービス精神旺盛です。


50代の今なにしてる?

同業者も注目する大繁盛居酒屋&店舗の経営者。日々世界中の飲食店を駆け巡る「ガンさんの日記 」はベイシックスオフィシャルHPにて毎日更新中!

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