10年後の飲食業界を語ろう ~vol.1 「料理」京都吉兆 嵐山本店 総料理長 徳岡邦夫氏

エフラボ2020では、大胆にも10年後の未来を予想!

「料理」「テクノロジー」「カルチャー」「トレンド」「サービス」「都市開発」「グローバル」「人事」「外交」、各ジャンルで活躍するスペシャリストに登場いただき、この9つの分野からの視点で、10年後の飲食業界を見つめてみます。

食という仕事に興味がある方、どのような分野で働きたいか迷っている方にはぜひ、彼らのインタビューを読むことをお勧めします。きっと飲食業界の将来性とポテンシャルの高さを感じてもらえるはずですよ。



食に携わるのなら、人類のためにどうあるべきかという視点を持とう。

京都吉兆 嵐山本店 総料理長  徳岡 邦夫さん 


高い志を持つ選ばれた人にこそ目指してほしい

2020年、京都吉兆は創業90年を迎える。これまで築き上げた信用、技術、おもてなしの心、そして人々の絆を大切に受け継ぎながらも、さらなる進化を続けている。徳岡邦夫氏の掲げる吉兆の使命は「人類の為に、日本文化を創造し続けること」。今後の飲食業界を担う若者たちに対しても、もっと広い視野を持つことを心より願っている。


「厳しいことを言うようですが、何のために就職するのかを履き違えている人が多い。就職して幸せになりたいというのは当然、誰もが考えることでしょう。ただ様々なメディアの影響もあるのかもしれませんが、その幸せの価値観がブレてしまっている。できるだけ楽をして、いいポジションに就き、お金儲けをして、安定したい、漠然とそんなふうに思っているのでは。もしくは、どうにかしてスターシェフに効率よくなり、一攫千金できないものかと考える。そんな簡単なものではありません。運を引き寄せる人はやはり努力を惜しまず、実際の行動に移しています。テレビに出て多少知名度が上がって、自分の勤めるレストランの売上げがよくなったとしても、だから、何なのか? そんなことにほとんど意味はない。食に携わるというのは、そういうことではないのです」



食というものの根源的な役割について、突き詰めて考えたことがない人があまりにも多いのではと、疑問を投げかける。


「ゲームをつくる人、ファッションをつくる人、本をつくる人でもいい、もちろんそれぞれに意義はありますが、食は次元が違う。これがないと生きられない、エネルギーの補給ができません。では、エネルギーの補給だけで生きていけるのかといえば、そうではない。美味しさはもちろん、仲間と一緒にくつろげる空間、行き届いたサービス、それらが全部複合していないと、生きるための力、活力にはなりません。食は私たちが生き続けるために必要なもの。そこに携わろうとしているのです。独立して小さな店を持つことを目標にする人も多いけれど、それは最終目標ではないでしょう。仕事とは、ビジネスとは、人の役に立つこと。食に対する知識や経験はたくさんの人に求められ、たくさんの人の役に立つ、人類のために必要とされる職業なのです。誰も彼もが、そうなれるわけではない。人類のためにどうあるべきなのかという視点を持ってもらいたい。高い志を持つ選ばれた人にこそ、目指してもらいたいと思います」




未来と世界を変える若き才能にエールを送る


人類が存続していくためになくてはならないもの--そんな高い意識を持って、飲食の世界に飛びこめば、また違った景色が見えてくるにちがいないと、徳岡氏は断言する。


「大きな夢や幸せを求めて、この世界に入ってきてもらいたい。食にはそれだけの奥行きがある。やってもやっても尽きない、確かなものがあります。いろいろな人との接点が増え、人とのつながりも広がっていきます。実際に私どもは料理屋を営みながら、地域活性化に取り組んでいます。国賓を迎える席や会議などに料理を通してメッセージを伝え、大喝采を受けることもあります。文化の中心である食を結びつければ、国と国の間に新しい展開が生まれる。食で、世界平和のお手伝いができるんですよ」



伝統を守りながらも、時代に即して、食に多方面からアプローチ。一次産業の現場における課題解決にも貢献している。


「有機栽培のあり方や養殖のあり方なども、健全化していかななければなりません。日本の科学技術なら、もっとできることがあるはずです。ただし、世界的な信用を得るためにも国や自治体と連携して、時間をかけ、たくさんの人で取り組まなければ実現できないでしょう。最近、レストランが小さな畑を手がけるケースが増えていますが、それはそれでいいとしても、単なるパフォーマンスで終わるのではと危惧しています。やっぱり、餅は餅屋。その道のプロの人たちと研究・開発して、人類のためにどんな餅をつくろうかと考えるべきではないでしょうか。そうでなければ世界に発信して、世界中で共有できるものにはならないと思います」



 大手食品メーカーとコラボした新プロジェクトも進行中。徳岡氏の視線は、常に世界へと向けられている。


「日本のアニメと欧米のアニメの違いがわかりますか? 色彩感覚やキャラクターの組み立ても異なりますが、一番の違いはストーリー。ヒーローが悪者をやっつけるという勧善懲悪ではなく、日本のアニメはなぜ悪者が生まれたのかを掘り下げる。どちらが勝つかではなく、背景を読み取り、みんなでこの世の中をよくしていきましょうというストーリー展開です。そこが世界に共感を呼んでいるのです。この精神は日本の茶道や華道、そして日本料理にも通じるもの。今、世界の人たちが日本の食を求めています。2019年には、NYのマンハッタンで日本文化の発信基地をつくるプロジェクトが動き始める予定です。京都吉兆では、科学者の人たちとともに新たな食品加工の基準を打ち出し、京都吉兆クオリティとして商品を発表します。“世界中のお母さんが自分の子どもに食べさせたいもの”がコンセプトです。日本人の食に対する健全なあり方を発信したいと考えています」



世界的にも食への投資は増え続けている。10年後の近未来、世界マーケットで活躍できる人材となるには何が求められるのかーー。

来年度より、徳岡氏は日本最大級の料理コンペティション「RED U-35」の審査委員長を務めることも既に内定している。未来と世界を変える次世代の若き才能たちに期待を込めて、熱いエールを送る。


「店の主人や先輩方と言葉を交わし、やりとりをすること。まずは、どのような想いで食の仕事に携わっているのかを知ることです。たくさんの人たちとの気持ちのやりとりの中から、着実に信頼を築きあげていってください。そして、繰り返しになりますが、夢や希望はでっかく持つこと。食の知識や技術を自己満足のため、自分がいい格好をするためだけに使うのはもったいない。中途半端な目標しか立てられない人は、おそらく自分の店さえ持てないでしょう。人類のため、今、生きている人たちだけではなく、これから生まれれてくる人たちのためにも働こうと考えれば、もっと本気でがんばれる。もっと真剣に学ぼうという気持ちになれるはずです」





徳岡 邦夫 Kunio Tokuoka

1960年生まれ。「吉兆」創業者湯木貞一氏の孫にあたる。1980年から本格的に修行を始め、1995年から総料理長として現場を指揮。2009年には(株)京都吉兆 代表取締役社長に就任する。2004年頃より海外の料理イベントにも積極的に参加。国内では、地域活性化など様々な課題解決に取り組み、現在、産業文化科学会・名誉理事や東京農業大学・客員教授も務める。



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