10年後の飲食業界を語ろう ~vol.2「テクノロジー」株式会社 トレタ 代表取締役 中村 仁氏

エフラボ2020では、大胆にも10年後の未来を予想!

「料理」「テクノロジー」「カルチャー」「トレンド」「サービス」「都市開発」「グローバル」「人事」「外交」…各ジャンルで活躍するスペシャリストに登場いただき、この9つの分野からの視点で、10年後の飲食業界を見つめてみます。

食という仕事に興味がある方、どのような分野で働きたいか迷っている方にはぜひ、彼らのインタビューを読むことをお勧めします。きっと飲食業界の将来性とポテンシャルの高さを感じてもらえるはずですよ。


テクノロジーを活かして進化すれば、飲食の仕事はもっとハッピーになる。


株式会社 トレタ 代表取締役 中村 仁さん



最早、IT化は当たり前。どう使うかを考える段階に


飲食の世界にも、ITの波は確実に押し寄せてきている。シェアナンバーワンの飲食店向け予約システムを開発・展開し、業界のイノベーションを推進するトレタ。代表取締役の中村仁氏は大手電機メーカーから外資系広告代理店を経て、30歳から飲食へという異色の経歴の持ち主でもある。数々の繁盛店を世に送り出し、“外食アワード2010”受賞歴も。それが、なぜまたITに?


「手がけていた店では立ち飲みブームの先鞭をつけたという自負がありますし、業界に一石を投じられたと思います。でも、そうは言っても素人、若い頃から飲食一筋に突きつめてきた人と比べると表面的でした。自分が飲食でできることはそんなに大きくないんじゃないかと感じるようになっていったのです。前職のキャリアはIT系ですし、以前から世の中を変えるのはテクノロジーという考えを持ち続けていました。改めて周りを見てみると、飲食業界にはテクノロジーのことをわかっている人は誰もいない。テクノロジーから一番遠いところにある業界になってしまっていました。

一方でその頃、ちょうどTwitter集客で店が盛り上がり、IT系の知り合いがたくさんできました。そういう人たちはみんな食への関心が高く、色が大好きなのだけれど、外食産業の人たちはみんなテクノロジーが嫌い。明らかに、テクノロジーが外食に片思いをしている状態です。

そこで気づいたのは、私が飲食のプロを相手にしても大したことは語れないということ。所詮、外様だし、レイトカマーですしね(笑)。ところが、IT系の人たちの前でレストランや食のことを語ると、『すごいですね、中村さん!』となる。同様に、飲食の人たちの前でテクノロジーを語っても、素人の知識でしかないのにやはり『すごい!』となる。

そこから、飲食のど真ん中で仕事をするより飲食とテクノロジーの業際がいいのではと思いつきました。双方の理解を深められるようなポジションが、自分のバリューを一番発揮できるにちがいない。“IT×食”を自分のライフワークにしようと決めました



 ITと食、2つの業界をつなぐ架け橋となることを目指して、2013年に会社を設立。予約台帳アプリ、トレタのサービス提供を開始すると加速度的に広まり、現在の導入店舗数は全国1万2000店を突破するまでに。飲食業界のIT化は、いよいよ次のステージに移りつつある。


3年ほど前、私たちは飲食のIT化元年と位置づけました。それは間違っていなかったようです。最早、ITを導入するか、しないかという議論は終わっています。IT化は当たり前の前提であり、ITを使って何をするのか、どんな店づくりを実現したいのかを考える段階に入っています。いまだに前の段階でとどまっている店があれば、この業界から退場を余儀なくされることになるでしょう。店を出すときに、電話やレジを入れようかと迷う人はまずいないですよね。今ではITもそれと同じになってきています。あとは、どう活用するかです」





真のホスピタリティとクリエイティビティが必要



では、IT化が普及すると、飲食業界はどのように変化していくのか。まずは予約台帳アプリの活用について、中村氏は次のように説明する。


「単純に言えば、飲食店の予約をクラウドで管理するというもの。サービス業にとって、一番大事なデータは顧客情報です。予約の管理だけではなく、お客様の名前や連絡先などの情報もそうすることで管理できます。

たとえば、やり手の店長がやめると客足がスーッと引いて店がガラガラになるというのは飲食店でよく聞く話ですよね。なぜ、そんなことが起こるのか。お客様の情報は、その店長の頭の中にしかないから。店長がいなくなった途端に、顧客情報という重要な資産が全部失われてしまっているのです。その資産をデータベース化しておけば、新しい店長もこのお客様はこういう人なんだと理解することができ、サービスの質を高めたり、お客様との関係性を深めるのにも役立ちます」



 10年後には予約管理や顧客情報の管理に限らず、テクノロジーの恩恵を受ける場面はより一層増えているにちがいない。そこで活躍できる人材となるには、何が求められるのだろうか。


「昔は、受験においても必要とされたのは暗記力。たくさん覚えられる人が高い点数をとって合格していました。しかし、今ではパソコン持ち込み可という試験も多い。暗記ではなく、考える力を重視する傾向が高まっています。

飲食業界も同じです。今まで、現場で力を発揮できていたのはお客様を覚えている人。たとえば、半年前に1回だけ来店した人を忘れずに覚えていれば『お久しぶりです』とお声がけして、お客様の心をつかんでいました。ところが、予約台帳をIT化すればそんな能力も必要なくなる。人間の記憶より正確にお客様の情報を把握できます。

覚えているのが当たり前となれば、さて、2回目に来てくれたこの人に何をして喜んでもらおうかとなりますよね。マニュアルに書かれている通りの『ビール一杯サービス』では感動は生まれません。データを使って、どんな会話をし、どのように楽しんでもらおうかと考える。真の意味でのホスピタリティやクリエイティビティが要求されます」



 IT技術の利用が進めば進むほど、飲食は原点に立ち戻る。より創造性の高い仕事へと変貌を遂げるだろうと、中村氏は予見する。


「調理もある程度までは機械化できるし、掃除や伝票整理などの雑用は全部機械に置き換わっていくはず。人間はより付加価値の高い仕事に集中できるようになります

飲食店においての、それはコミュニケーション。お客様と一緒に場を創りあげることのできる人が活躍する仕事になっていくでしょう。


今も、飲食業界には『人と接するのが好き』『人を喜ばせたい』という想いで入ってくる人が多いですよね。でも、実際には何時間働いてもお客様と言葉を交わすのは正味30分あるかないか。心が折れて、やめてしまうのも無理はありません。

IT化が進めば、そんなこともなくなる。本当にやりたかったことに時間をかけられる。テクノロジーを正しく活かして進化すれば、飲食の仕事はもっとハッピーになります」




トレタのミッションは「食の仕事を、おもしろく」。これからも10年先にも、飲食に関わるすべての人たちに向けて仕事を効率化するのみならず、より魅力的な楽しいものへと変えるチャレンジを続けていく。


「IT化すれば仕事が楽になる。楽になれば、やるべき仕事に専念できる。無駄な手間も減って、労働環境が改善し、やりがいが高まる。みんなのやりがいが高まれば、お客様の満足度が上がり、リピートも増える。すると、店の収益は上がり、売上目標を達成できる。目標を達成すれば、給料も上がる。このサイクルの1つひとつを丁寧に実現していきたいですね」



 ちょっと先の未来、飲食の世界はIT技術の導入をはじめ、大きな変革期を迎えることだろう。中村氏は、そんな時代だからこその新たな可能性を見据えている。


「激動の時代の中で、進化を続けるためには脱皮しなければなりません。脱皮の時期は、脆弱で外敵に狙われやすい。どんな大手企業でも根こそぎ倒されるかもしれません。逆に言えば、そんなときだからこそチャンスです。飲食は、もともと個人でも大手と渡りあえる数少ない業界。たとえば、今から何か商売を始めようと、自動車メーカーを立ち上げてもトヨタには勝てませんよね。でも、大手ファストフードの隣に美味しいハンバーガーショップを出すのなら、勝ち目は十分にある。互角以上の勝負ができるはずです。テクノロジーを使った新しい店をいち早く実現すれば、大きく成功できるでしょう。この業界には、夢に描くようなサクセスストーリーがまだまだあります


Hitoshi Nakamura

パナソニック株式会社、外資系広告代理店を経て、2000年に飲食店を開業。立ち飲みブームの先駆けとなった「西麻布 壌」「豚組」「豚組しゃぶ庵」など数々の繁盛店を世に送り出す。2010年、ツィッター集客が話題となり「外食アワード」を受賞。2011年、料理写真の共有アプリ「ミイル」をリリース。2013年、株式会社トレタを設立する。

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