かっぱ橋って?
名前は知っているけど、行ったことはない。噂には聞いたことはあるけど、詳しいことはよく知らない。100年以上の歴史を持つ『かっぱ橋道具街』は、飲食業界で働く人々にとって欠かすことのできない街。個性あふれる様々な専門店が約170店舗集まった、プロを支えるプロの街。現在では、食の専門店街として日本のみならず、海外の人からも愛されている『かっぱ橋道具街』だが、その名前の由来にはふたつの説がある。ひとつは、今から160年ほど前の文化年間のころ、合羽川太郎(本名:合羽屋喜八)が洪水を防ぐために排水工事する際、川太郎に助けられたことのある隅田川の河童たちが手伝ってくれたことにちなんで。そしてもうひとつは、江戸時代、このあたりの下屋敷に住む侍や足軽が自分たちでつくった雨合羽を近くの橋でズラーッと干していたことからその名がついたとされている。
かっぱ橋道具街MAP
懐かしい駄菓子やおもちゃを扱う、卸売問屋
雷おこしのタネをつくる製造業の会社として、昭和3年に創業。現在は、駄菓子をはじめとするお菓子やブリキのおもちゃ、お祭りや縁日の小道具など、様々な商品を扱っている。すべて卸値なので、バラではもちろん、ほかのお店では見つけられることのできない駄菓子をまとめ買いをするのも楽しみのひとつ。
| 川原商店 | 東京都台東区西浅草3-9-2 ☎03-3842-0841
料理を愛する人と向き合う“良理″道具の老舗!
浅草にあるお釜のお店……からその名がついた、釜浅商店は、111年もの歴史と経験を誇る料理道具のお店。“良い道具には、良い理(ことわり)がある。だからこそ、良い料理人には良いものを”という信念のもと、使いやすくて、タフで永く愛される料理道具=良理道具を提供している。店内にはオリジナルの南部鉄器や打ち出しのフライパン、そして80種類1000点もの包丁などが並び、買う人に合わせた道具選びを知識豊富なスタッフが手伝ってくれる。また、購入した刃物などへの名入れサービスや修理などのアフターケアも手厚い。2018年5月には、初の海外店となるパリ店をオープン。
| 釜浅商店 | 東京都台東区松が谷2-24-1 ☎03-3841-9355
バリエが豊富なユニフォームのプロショップ★
飲食店専門のユニフォームをデザイン開発から販売まで行う、セブンユニフォーム。1450種類以上ある幅広いアイテムを直営で取り扱っているお店で、スタッフの知識も豊富なうえにフォロー体制もしっかり整っている。丈夫で洗いやすい生地のユニフォームをお店の内装や提供する料理などに合わせてトータルで提案するのが、最大のこだわり。合羽橋南交差点付近にもお店を構えており、各店を見比べてみるのもいいだろう。
| セブンユニフォーム | 東京都台東区西浅草3-9-3 ☎03-3844-0072
純日本製の木の器や漆器、和雑貨の宝庫
オープンして5年という、かっぱ橋道具街の中では比較的新しい和洋器の専門店。器は主に、奈良県吉野郡黒滝村から直接仕入れているので、店内は木の良い香りで溢れている。人気商品は、インパクトのあるカッティングボード。お料理はもちろん、器が話題の中心になれる……そんな語れる器が豊富に揃っており、一つひとつ表情がちがうので、自分らしいお気に入りを見つけられる。
| 器草子 | 東京都台東区松が谷3-1-16 細谷ビル1F ☎03-5830-3457
作り手の想いも届ける、こだわりの箸屋
奈良県の吉野杉の割り箸を東京に普及させるためにスタートした、はし藤本店は創業108年の箸専門店の老舗。4年前に改装した店内は、シンプルかつスタイリッシュな雰囲気でありながら、森を感じられるものになっている。林業活性化に重きをおいているため、日本各地の杉や檜を中心としたナチュラルな箸が揃っており、また、職人の手仕事によって作られている本物の塗り箸も自慢。箸の歴史や知識に詳しいスタッフによる箸選びのアドバイスも受けられる。
| はし藤本店 | 東京都台東区西浅草2-6-2 ☎03-3844-0723
昔ながらの食品サンプルに心が踊る人気店
飲食業界から飛び出して、一般の人々の間で人気に火がついている食品サンプル。越谷に工場をかまえる東京美研では、業務用の食品サンプルから、観光客にむけたキーホルダーやストラップまで、数多くの商品が店内にところ狭しと並んでいる。食品サンプルは、昔ながらに愛される料理が多く、それを求めて地方から常連さんもやってくる。お店の目印は、黄色い看板と白くて大きな豚。
| 東京美研 | 東京都台東区西浅草1-5-15 ☎03-3842-5551
使えば違いが分かる、刷毛と刷子の専門店
大正3年創業の刷毛と刷子の専門店で、家庭用の馬毛の歯ブラシから職人が使う料理刷毛まで、様々な種類の刷毛と刷子がそろう。基本的に毛も木も天然素材を重視しているため、化繊と違ってへたれにくく、長持ちするのが最大のウリ。伝統工芸品のたわしは、ガラス製品も傷つけることなく、体に触れても痛くない……と繊細なつくりになっている。リピーターがとても多く、お店やその人に合った刷毛や刷子のオーダーも可能。
| かなや刷子 | 東京都台東区西浅草1-5-9 ☎03-3841-1113
何度も足を運びたくなるワケ
『かっぱ橋道具街』の魅力は、器から刃物までの料理道具全般、さらにはユニホーム(制服)やお菓子、食品サンプルなど、飲食に関わるありとあらゆるものが取り揃えられているというイメージが強いかもしれないが、品揃えの多さだけなら、今の時代の大型量販店やデパートとさほど変わらないかもしれない。つまり、魅力はそこではなく、専門知識が豊富なスタッフがそれぞれのお店にいること。だからこそ、コミュニケーションをとりながら納得のいくものを選び、買うことができるのである。このこだわり深い対面販売こそが、『かっぱ橋道具街』の最大の魅力なのだ。プロの職人や専門家ですら『かっぱ橋道具街』のスタッフと話すことで新しい発見に出会える……このことこそが、何度も足を運びたくなる理由なのかもしれない。
かっぱ橋道具まつり
『かっぱ橋道具街』は最初に述べたように、プロを支えるプロの街であるが、最近ではテレビや雑誌で取り上げられることも多く、一般客や海外の観光客にも人気を博している。なぜなら、ここでしか揃わない珍しいものがたくさんあるから。そこで、年に一度、10月9日(どうぐの日)をはさんだ一週間に〝道具まつり〟という大きなイベントを開催している。この日ばかりは、すべてのお店が一般客や海外の観光客に向けて最大のおもてなしをする。しかし、それ以外は基本、プロに向けて商売をするというプライドを『かっぱ橋道具街』は守り貫いている。どんなに人気がでようとも、ブームになろうとも、そこは決して変わらない。だからこそ、これからも『かっぱ橋道具街』の歴史は続き、多くの飲食のプロから愛される街であり続けるのだ。
あらゆるニーズと時代の変化に合わせて、大切なものを守りながら進化し続ける街『かっぱ橋道具街』。飲食業界を志すものならば一度は足を運び、その歴史と心おどる知識を直接目で見て、学んでほしい。
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